DVD エリザベス1世~愛と陰謀の王宮~/DVD エリザベスR

英国テレビドラマから2本。

DVD エリザベス1世~愛と陰謀の王宮~

  • 出演: ヘレン・ミレン(Helen Mirren)/ジェレミー・アイアンズ(Jeremy Irons)/ヒュー・ダンシー(Hugh Dancy)
  • 監督: トム・フーパー(Tom Hooper)
  • 販売元: エイベックス・マーケティング株式会社
  • 発売日: 2007年10月24日
  • ディスク枚数: 2枚(DVD2枚)
  • 収録時間: 109分/137分
  • 定価: 3990円

内容

イギリスの2回シリーズの特番テレビドラマ。日本でもNHKで放送されたことがあるそうです。映画『エリザベス』・『エリザベス:ゴールデン・エイジ』と比較すると、こちらのほうが歴史の流れやエリザベス本人の見た目年齢が史実に近い。2回シリーズのため、DVDも前編・後編の2枚組。計約4時間の大作です。

鑑賞メモ

前編はアンジュー公との結婚話、レスター伯との関係と、オランダ史でもおなじみの人物との関係がメインに語られます。映画版『エリザベス』では変人に描かれていたアンジュー公ですが、こちらでは互いに好意は寄せたものの、政治・宗教的理由での破綻となっています。レスター伯も、嫉妬深いだけで無能なわけではなく、寵愛を失わずに死んでいったので、割とお別れのシーンはそれぞれ美しく描かれていたといって良いでしょう。スコットランド女王メアリの処刑に対する逡巡は『エリザベス』と近いものがありますが、従姉妹を殺すのをあれだけためらっておいて、ほかの謀反人には容赦しないあたりはやはり王者でしょうか。全編通していろいろ処刑のシーンがあるんですが、「生きながらはらわたを引きずり出しておしまい!!」というのを本当に映像にされると、さすがに正視できませんね…。ちなみにアルマダは、「来た見た勝った」くらいに、本当にあっさりです。フェリペ二世どころか、スペイン船の1隻も映りません。オランダについて言及される台詞はそれなりにありますが、エリザベスにとってオランダは「チーズしかない庶民の国」とのこと(笑)。

後編は、『ゴールデン・エイジ』では愛人ウォルター・ローリーとの愛憎劇がメインですが、この『エリザベス1世』では、レスター伯の義理の息子であるエセックス伯ロバート・デヴァルーとの愛憎劇となります。『ゴールデン・エイジ』よりもエリザベスの年齢が実年齢に近いため、イタさ度合いもかなり増します(別な意味で正視できないというか)。お相手のエセックス伯もあまりにも愚かしすぎるかなあ、と思います。一応「カディスの海戦」の英雄なわけですが、それを感じさせないほどおバカちゃんです。

『ゴールデン・エイジ』にあったようなインターナショナル色はほとんどなく、のちに後継者となるジェームズ一世とのからみで若干スコットランドが出てくる程度。ほぼイングランド国内しか映りません。エリザベス以外の女性にほとんど個性がなかったのもやや残念ポイントでしょうか。

DVD エリザベスR

  • 出演: グレンダ・ジャクソン, ロバート・ハーディー, ピーター・ジェフリー, ジョン・シャープネル
  • 監督: ロドリック・グラハム
  • 販売元: IVC,Ltd.
  • 発売日: 2014年4月25日
  • ディスク枚数: 3枚(DVD3枚)
  • 収録時間: 524分
  • 定価: 7344円

内容

1971年撮影・1972年放送のBBCのテレビドラマシリーズ。テレビとしては1回約85分と長く、短い映画6回分くらいのボリュームです。もちろん続きものですが、それぞれの回にトピックスがあり、それぞれ独立しても観られるようになっています。管理人は2004年版を購入しましたが、こちらの2014年版のほうが安価で手に入りやすいと思います。50年近く前の映像なのでかなり劣化してはいますが、逆にそれが時代劇感を出しているかも。主演のグレンダ・ジャクソンは1971年時点で35歳。さすがに20代前半のエリザベスを演じるにはちょっと老け気味ですが、回を重ねるごとに本当に老人のように(とくに目元や首回りがスゴい)加齢していっていて、当時のメイク担当の力を実感します。また、エリザベスのドレスは実在する肖像画をモチーフにしているとのことで、目にしたことがあるものが多いです。ナントカポートレイトと名前のついているものは大抵あった気がします。

印象的だった衣装はこの辺です。(画像はすべてWikimedia Commonsのパブリックドメイン画像)。

Elizabeth I when a Princess George Gower Elizabeth I Armada Variant Marcus Gheeraerts (II) - Portrait of Queen Elisabeth I - WGA08657 Elizabeth I Darnley Portrait v3

ロケはこのボリュームからすると相当少なく、大部分が宮廷の中で進みます。戦争シーン・海戦シーンはほとんど描かれません。船は、子供のフェリペ三世が遊んでいたオモチャくらいしか出てきていないと思います。いわゆる残虐シーンも直接的描写はほとんどなく、せいぜいメアリー・ステュアートの断頭シーンくらいです。廷臣たちもあまり多くなく、劇中のエキストラ人数も少ない印象があります。ティルベリー演説の時に出ていた一般兵士に至ってはたった2人です(笑)。全体的には、映画よりは、同じテレビのヘレン・ミレン版に近いですね。

各回のサブタイトルと、内容の概要については以下のとおり。

  1. “The Lion’s Cub”: エリザベス即位前、姉メアリー一世との確執が中心。
  2. “The Marriage Game”: エリザベスの即位と結婚計画、レスター伯ロバート・ダドリーとの恋愛。登場人物の紹介的な回でもあり。
  3. “Shadow in the Sun”: アンジュー公フランソワとの結婚話。
  4. “Horrible Conspiracies”: スコットランド女王メアリー・ステュアートの陰謀と処刑をめぐる回。
  5. “The Enterprise of England”: アルマダ回。ロンドンとマドリードの宮廷が対比的に描かれる。
  6. “Sweet England’s Pride”: エセックス伯ロバート・デヴァルーの陰謀を含む晩年。

相変わらずオランダについては地名しか出てきませんが、オランダがらみの回は第3話と第5話。とくに第5話は愛憎劇色が薄く、外交的な駆け引きになるので個人的にはいちばん面白く観れました。他の作品と違うところは、フェリペ二世とエリザベス一世を「王者」としてまったく同じように描いていること。他では互いに互いを敵だと思い感情的な動機が強調されがちですが、ここでは国王としての立場は同じであり、国王にしかわからないシンパシーもある。そのような、少しズレた本音と建前の描写が良かったことと、そのズレが、それぞれその廷臣たちを悩ます結果としているのも良い。話している相手と会話が噛み合ってない、前に自分で言ったことと真逆なことを命じる、意見しようとすると別の論理でキレる、トップダウンしといて他人のせいにする、等、一社会人としてはホントにこういう上司イライラするわー、と、英西両方の廷臣たちに同情してしまいました。


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