三十年戦史/ヴァレンシュタイン

フリードリヒ・シラーの著作から、三十年戦争関連を2件。「シルレル」はシラーのことです。三十年戦史の日本語訳は『オランダ独立史』同様、昭和20年前後の旧訳なので、漢字は旧字体・地名等も漢字表記が多く、現代日本人としては非常に読みにくいです。そのため英語訳版も挙げてあります。場合によってはこちらのほうが読みやすいかも。

三十年戦史(第一部・第二部)

  • 著者: シルレル (著), 渡辺 格司 (翻訳)
  • 出版社: 岩波書店
  • 発行年月: 1943年12月20日~1944年5月30日
  • 定価: 778円、842円(1988年復刻版価格)

読書メモ

一章は前史から始まり、宗教をテーマにした論述が続くので、若干入りにくいかもしれません。一章後半から通史になるので、だいぶ読みやすくなってきます。

訳者含め、この作品を「文学」とみる見方もありますが、管理人は純粋な歴史叙述だと思います。そもそもがシラーが大学で講義する際に用いたテキストが出自というのもあり、最初に英訳を読んだからというのもあるからかもしれません。日本語訳は、昭和の(現代からみれば多分に文語的な)記述というのも相まって、かなり文学的な記述となっています。確かにグスタフ=アドルフやヴァレンシュタインを扱った箇所は、不自然なほどにボリュームが割かれているうえに台詞の引用も多用され、歴史書としては抑揚に富んでいる感はあります。が、ロマン主義時代の歴史記述にはありがちな特徴でもあり、「お話」や「物語」とは程遠いものです。むしろウェッジウッドの『ドイツ三十年戦争』のほうが叙情的・「ロマン主義的」に思えます。

また、これも訳者含め、五章は「この後の歴史はシラーの興味をひかず」などとオマケ扱いのように評されていますが、これも「物語」を期待する向きからした感想と思います。プラハ条約以降の三十年戦争は、ドイツ国内の諸勢力というよりもドイツ対外国の色合いが強くなってきて、個別の会戦や個々の将軍たちの重要性も減じてくるため、人物や戦闘そのものの記述が少なくなるのは何ら不思議ではありません。ウェストファリア条約の内容や「その後」にまで言及のない当作では、一章や二章前半と同様、五章単体で必要充分量でありかつ密度も濃く、むしろ中間部のグスタフ=アドルフやヴァレンシュタインがらみの記述が冗長すぎるともいえます。

ところで、所有しているのは第3版なんですが、第二部のカバー見返しにとんでもない誤植を発見!

「勇猛果敢なスウェーデン王グスタフ・アーノルド率いる新教徒軍は…」  ……誰!?

The Thirty Years’ War

こちら英訳バージョン。管理人はこちらを最初に読みました。

ここでは絵面の良いものを挙げましたが、PDなので電子書籍・WEBともに無償のものもたくさん出ています。

ヴァレンシュタイン

  • 著者: シラー (著), 濱川 祥枝 (翻訳)
  • 出版社: 岩波書店
  • 発行年月: 2003年5月16日
  • 定価: 800円

読書メモ

こちらは詩劇。劇として上演される前提で、全編台詞によって成り立っています。なので「三十年戦史」に比べると非常に読みやすく、一気に読めます。ヴァレンシュタイン暗殺までの3日間を描いていて、登場人物は重要な史実人物以外に架空の人物も含まれています。「三十年戦史」から8-9年後の作品ですが、四章と非常に良く似た流れで進んでいる箇所も多く(同じ作者が書いているので当たり前といえば当たり前ですが)、続けて読むとより理解しやすいかと思います。

架空人物として登場する重要人物は、ピッコロミー二の一人息子という設定のマクス。…正直、かなりイライラします。若者の直情さというか恋愛にのぼせてるというか、恋人のテークラ(ヴァレンシュタインの娘)の周囲関係無しの態度も同様にストレスフル。もっとも、このような「若者たち」の要素が無いと、登場人物はむさくるしい軍人だけになってしまうので、絵的には必要なんでしょうね。


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